厚生労働省の精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会は、精神障害の労災認定の迅速化に向けた分かりやすい「ストレス」の例示や、セクハラやいじめ等が発病前おおむね6カ月(評価期間)以前から続いている場合には、開始時からの行為を一体として評価するなどを内容とした報告書を公開しました。
■検討の背景
| ・精神障害の労災請求件数は、近年大幅に増加(平成10年度:42件 → 平成22年度:1181件) ・事案の審査には平均8.6カ月を要し、また、多くの事務量が費やされ一層の効率化が必要 ・厚生労働省の自殺・うつ病等への対策(平成22年5月プロジェクトチーム報告書)でも、労災認定手続の迅速化に言及 ・セクシュアルハラスメント事案特有の事情への対応が必要 |
| ・平成22年10月から、医学及び法学の専門家による専門検討会を開催し、審査の迅速化や効率化を図るための労災認定の在り方を検討 ・「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」を平成23年2月から開催し分科会報告を取りまとめ |
■報告内容のポイント
業務による心理的負荷(ストレス)の評価基準の改善
◎心理的負荷の強さを判断するための新たな評価表を提示
・「出来事」と「出来事後の状況」を一括して評価
・認定対象となる強い心理的負荷と認められる出来事の具体例を記載
(倒産を招きかねないなど会社の経営に影響する重大な仕事上のミスをし、事後対応にも当たったなど)
・長時間労働を伴っている場合の認定方法を記載
(転勤して新たな業務に従事し、その後月100時間程度の時間外労働を行った場合は「強」 など)
◎出来事が複数発生している場合の評価方法の明示
◎評価期間(6か月)の例外として、セクシュアルハラスメントやいじめが長期間継続する場合を記載
◎既に発病していた業務外の精神障害が、業務による出来事により悪化した場合の認定要件の明示
審査方法等の改善
◎精神科医の専門部会による合議を、特定の事案に限定(全件協議 → 判断が難しい事案のみ協議)
◎業務以外の心理的負荷、個体側要因の調査を簡略化(請求人の負担軽減)
◎セクシュアルハラスメント事案に関する職員への研修と専門知識を持つ者等の育成・配置
※セクシュアルハラスメント事案に係る分科会報告書の概要
◎検討会の目的等
・セクシュアルハラスメント事案については、その性質から、被害者の労災請求や労働基準監督署での事実関係の調査が困難となる場合が多いなどの、他と異なる特有の事情がある。
・「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の下、平成23年2月から「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」を開催。上記の特有の事情を踏まえた精神障害の労災認定の基準やその運用の在り方について検討結果を取りまとめ、専門検討会に報告。
◎検討結果
認定の基準について
・セクシュアルハラスメントの心理的負荷を「強」と評価する要素(行為の態様やその反復継続の程度等)を
具体的に提示
<胸や腰への身体接触を含み、継続して行われた事案>
<発言が継続し、会社が把握していても対応・改善されなかった事案等>
・強姦等は、それだけで心理的負荷が「強」となることを明示
・行為が発病前おおむね6カ月(評価期間)以前から続いている場合は、開始時からの行為を一体として評価
・いじめ・嫌がらせを伴う場合、心理的負荷をより強いものに修正
・その他留意事項の明示
<行為者に迎合するメール等をもって被害者の同意があると安易に判断しない>
<行為者と被害者の立場(正規・非正規等)を考慮する等>
・心理的負荷評価表での分類を、「対人関係のトラブル」から独立させることも検討
運用について
・わかりやすいパンフレットの作成、関係機関への配布
・被害者の心情を十分に考慮した懇切丁寧な窓口対応、職員への研修と専門知識を有する者の育成・配置
・関係者からの聴取等の調査に当たり、プライバシー保護、被害者の負担軽減等に留意
詳しくは下記参照先をご覧ください。
参照ホームページ[厚生労働省]