【 全規模事業主へ適用 】
今回の改正によっても、年次有給休暇は日単位でまとまった日数を取得することが望ましい、という基本的な考え方に変わりはありません。
時間単位の細切れな休暇しか取得できないようでは、年次有給休暇本来の趣旨が損なわれてしまいます。
このため、あくまでも年次有給休暇の取得は日単位が原則であって、時間単位年休は、
①事業場で労使協定を締結すること
②年に5日分を上限とすること
③労働者の希望が前提であること
という一定要件の下で認められる例外的な取扱いです。
時間単位で年次有給休暇を与えるにはまず、その事業場で書面により労使協定を締結する必要があります。
この労使協定では、
①時間単位年休を取得できる対象労働者の範囲、
②時間単位年休の日数(年5日以内)、
③時間単位年休1日の時間数
(1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するか)、
④1時間以外の単位(2時間、3時間などの単位)で与える場合の時間数
などを定めなければなりません。
【 就業規則例 】
※ 下記規定は規定例です。実際には各事業所様の実態に合わせる必要があります。
(時間単位年休)
第 条 第 条〔筆者注:就業規則中の年次有給休暇の単位に関する
既存の規定(「年次有給休暇は、半日を単位として請求することができる」
といった規定)を想定しています〕にかかわらず、会社は、従業員の
過半数を代表する者と協定の定めるところにより、同協定の定める
範囲の従業員に対し、各年度における年次有給休暇(前年度から
繰り越されたものを含む)のうち5日を限度として、2時間または3時間を
単位とする年次有給休暇(「時間単位休暇」)を付与する。
2 従業員が取得した時間単位休暇に対しては、1時間当たり、
健康保険法(大正11年法律第70号)第99条1項に定める
標準報酬日額に相当する金額をその日の所定労働時間数で除して
得られる金額の給与を支給する。
【 労使協定例 】
※ 下記協定は協定例です。実際には各事業所様の実態に合わせる必要があります。
○○株式会社(以下「会社」という)と○○株式会社の従業員の過半数を
代表する者は、時間を単位とする年次有給休暇(以下「時間単位年休」
という)の付与に関し、次の通りの協定(以下「本協定」という)を締結する。
(時間単位年休の付与)
第1条 会社は、第2条に定める従業員に対し、本協定の定めるところにより、
時間単位年休を付与するものとする。
(適用対象従業員)
第2条 時間単位年休付与の対象とる従業員は、以下の各号に掲げる者
以外の従業員とする。
(1)製造ラインの作業に従事する者
(2)裁量労働に従事する者
(3)フレックスタイム制による勤務が適用される者
(時間単位年休の日数)
第3条 時間単位年休付与の対象となる年次有給休暇の日数は、
各年度において各従業員に付与されている年次有給休暇
(前年度未消化の年次有給休暇を含む)のうち、5日とする。
ただし、従業員に付与されている年次有給休暇の日数が5日未満
の場合は、当該年次有給休暇の日数を時間単位年休付与の対象となる
年次有給休暇の日数とする。
(時間単位年休付与の対象となる年次有給休暇1日の時間数)
第4条 時間単位年休付与の対象となる年次有給休暇1日の
時間数は、次の通りとする。
(1)所定労働時間が7時間を超え8時間以下の従業員については、
8時間とする。
(2)所定労働時間が6時間を超え7時間以下の従業員については、
7時間とする。
(時間単位年休付与の単位となる時間数)
第5条 時間単位年休は、2時間または3時間を単位として付与するもの
とする。
(時間単位年休の付与手続き)
第6条 従業員が時間単位年休を取得しようとするときは、取得しようと
する日の○労働日前までに会社所定の様式の申請書をもって承認申請
するものとする。
2 会社は、その事業の正常な運営を妨げない限り、前項の申請を承認し、
申請書に記載された通りの時間単位年休を付与するものとする。
3 会社は、第1項の申請に従って時間単位年休を付与することにより、
その事業の正常な運営を妨げると判断するときは、当該従業員に対し、
速やかに不承認の通知をし、他の時季に時間単位年休を付与することが
できる。
4 第1項の申請が、就業規則第 条に規定する代替休暇の取得申請と
合わせて半日または1日単位とする休暇としてなされたときは、
前項の時季変更権は、かかる単位の休暇に対して行使するものとする。
(時間単位年休に対して支払われる賃金)
第7条 本協定に従って取得された時間単位年休の時間については、
健康保険法(大正11年法律第70号)第99条第1項に定める
標準報酬日額に相当する金額をその日の所定労働時間数で除して
得られる金額を支払うものとする。
(有効期間)
第8条 本協定の有効期間は、平成 年 月 日から1年間とする。
ただし、有効期間満了日の1ヵ月前までに、本協定当事者のいずれの
一当事者からも反対の意思表示がないときは、有効期間を1年間延長
するものとし、以後も同様とする。
平成 年 月 日
○○株式会社 代表取締役○○○○
○○株式会社 従業員代表○○○○